氷を入れてから注ぎ、混ぜる(ステアする)やり方
炭酸飲料を使用する場合、炭酸飲料を注ぐ際に発砲した炭酸が自然とお酒を混ぜ込んでくれます。全くステアしなくてよいというわけではないですが、通常の「回す」(「ステア」をする)のではなく、「バースプーンを氷の下に入れ、氷を軽く持ち上げる」やり方をすると、氷が沈む際に、やはり炭酸が発砲してさらにお酒を混ぜ込んでくれます。
通常の「回す」ステアをすると、やり方によっては炭酸が抜けきって、ただの水っぽいカクテルになります。これでは炭酸飲料を使用した意味がなくなってしまいます。ハイボールがただの水割りになる程度ならまだ飲めますが、コーラやジンジャーエールなどでこれをやられると、かなり気が抜けた間抜けなカクテルになります。
また、使用する酒によっては比重が重く、上記のやり方ではうまく混ざってくれないことがあります(例:カシス・ソーダ)。グラスの底に比重の重い酒が残り、ソーダが上にフロートされたプースカフェスタイルになってしまうのです。特に、背の高いグラスではグラスの口のところまで均一にステアしようとすると、かなり派手にかき回す必要があり、炭酸が抜けきってしまいます。
個人的には、炭酸飲料を先に入れ、後から酒を注ぐことで、これに対応しています。こうすると、比重の重い酒が炭酸飲料の中を重力に従って下がっていく過程で自然と混ざっていくし、酒がグラスの底につくまでの短い時間の中でバースプーンの回転によるステアを数回加えてやると、均一に混ざります。最初から背の低めのグラスを使用すれば、あまり派手にステアをしなくても混ざりますので、このような対処も不要になりますが。
炭酸飲料などを使用せず、酒のみを複数ビルドする場合は通常のバースプーンを回転させることによるステアをすることになりますが、どの程度混ぜるかによってもカクテルの個性が変わってきます。
個人的には、複数の「酒」のみを使用したビルドスタイルのカクテル(例:ラスティ・ネイル)においては、混ぜすぎないことも重要だと思っています。まぜる、という意味合いにおいては「シェーク>ステア>ビルド」の順番で混ざり方が甘くなってくるのですから、敢えてビルドで作る場合、その「混ぜ方が甘い」ことを逆利用して、技法の特徴を最大限に活かす方が良いのではないかと思います。よく混ぜたければ、シェークやステアの技法で作れば良いのです(実際、カクテルレシピ集ではビルドとなっているカクテルをステアで作るバーテンダーも存在します)。
だから、自分自身で「酒」のみを使用したビルドスタイルのカクテルを作る際には、敢えてステアを2〜3回転で止め、酒同士が個性を保ったまま自然と混ざり行く状態で飲み始めることも多いのです。
使用する酒の銘柄によってもかなり変わってくるとは思いますが、最適なシチュエーションで最適なレシピを最適な技法で提供できることが、バーテンダーとしての醍醐味であり、それぞれのバーテンダーの方はかなり技法に工夫をされていると実感しています。レシピブックに書かれている以上の工夫が必要だと実感し、自分自身でいろいろと試している最中です。